フロントローモータースポーツの快挙
NASCAR開幕戦デイトナ500は予定通り現地午後3時から開催された。レース開始から14周目に一回目のビッグワンが発生し、雨も降り始め、16周目でレースは中断した。約6時間の中断後、レースは再開された。再開後は14周目までが嘘かのようにシングルレーンのレースが続き、ステージ1,ステージ2共にJGR(トヨタ)のデニーハムリンが制した。ステージ終了直前3周まではずっとシングルファイルで誰もリスクを負って動こうとはしなかった。そして、最終ステージもシングルファイルが続き、最終ラップまで動きはなかった。最終ラップにはペンスキーのブラッドケセロウスキー、ジョーイロガーノ、SHRのケビンハービック、フロントローモータースポーツのマイケルマクドウェルなどフォード勢が固まっており有利な状況で、ケセロスキーがロガーノをブロックしたところクラッシュが発生。クラッシュを避けたマイケルマクドウェルが長かったデイトナ500を制した。
クラッシュ後すぐにイエローとなり、イエローになった瞬間に前に出ていたのがマクドウェルだった。
10年周期のミラクル
マクドウェルは今回のデイトナ500がキャリア初優勝。そして、面白いことに10年前の2011年もデイトナ500ではトレバーベイン(ウッドブラザーズ)がキャリア初優勝、そしてその10年前の2001年にはマイケルウオルトリップが初優勝した。
速かったハムリン(トヨタ)が勝てなかった理由
ステージ1,ステージ2の両方を制しレースも支配していたハムリンが勝てなっかた理由はピットのタイミングにある。JGRの三台とババは14周目のクラッシュでも被害は少なくレース再開後もリードラップをキープしており優勝候補だった。そして、速さも見せていた、それなのにステージ3では前に出ることができず、シボレーとフォードに完敗した形と結果はなってしまった。ステージ3ではイエローのピットではなく、アンダーグリーンピットとなりそこでトヨタは遅れてしまった。遅れたと言っても、ピット作業が遅かったわけではなくスーパースピードウェイ特有のピットタイミングが原因となってしまった。デイトナ、タラデガではアンダーグリーンピットでは一緒に入ってくるパートナーが重要である。多く一緒に入る方が有利となる。その理由は、ピット後速度が上がるまで時間が掛かりお互いにパックを作ってレース速度まで戻さなければいけない。そのため、スーパースピードウェイではエンジンメーカー同士やチームごとにまとまってピットに入ってくる。例えば120周にフォードが入れば、その数周後にトヨタ、シボレーと入ってくる。そのため他のレーストラックで見られる、1台だけでタイムを稼ぎアンダーカットやオーバカットと言った作戦は難しくなる。
これを踏まえたうえで、最後のアンダーグリーンピットを見てもらえばわかると思うが、シボレーとフォードはまとまった台数でピットに入っていたのに対し、トヨタは4台でその間も開いてしまっていた。結果はハムリンが1台でピットアウトしてしまいパートナーがいない中、先に入ったフォード組が速度をつけており抜かれてしまった。
シングルファイルのレースになっていたので、最後のアンダーグリーンでは台数の少なかったトヨタは、トヨタのみでピットには入らず、シボレーかフォードのどちらかに付いていき一緒に入ればポジションを落とさず戻れたかもしれない。コース上で抜くのが難しかった今年のデイトナ500でピットタイミングがフォードより3から5周の有利にあったトヨタでトヨタ同士でパックを作り前に出る作戦をとっていたようにも見えたが結果としては後に入ることや、単独でのピットとなりポジションを落とす結果となった。
14周目のビッグワン
14周目のビッグワンは見ていた誰もが早すぎると思っただろう。16台が巻き込まれ10台がリタイアとなるクラッシュになってしまった。
クラッシュは前方で起こったこともあり後方の多くのマシンが巻き込まれてしまった。インサイド2番手を走っていたSHRのエリックアルミローラがJGRのクリストファーベルからコツンとプッシュされバランスを崩しアウトサイドにいたヘンドリックのアレックスボウマンを巻き込み後方のブレイニー、テューレックス等々が巻き込まれた。カイルブッシュからのプッシュもあり勢いがついてしまい、ベルがアルミローラにプッシュしてしまったように見えたので、カイルも2年目のベルにそこまでプッシュするのはリスクを負うこともなかったのではないかと思う。ベルの経験不足と風の流れがこのクラッシュを引き起こしてしまった。
このクラッシュが残り20周とかであれば、アグレッシブに攻めた結果となるが残り180周のところで起こるべきではないクラッシュではあった思う。雨でハーフウェイレースとなると見込んでいたのか、他の後方のドライバーも3ワイドで攻めていたのも重なり、結果16台を巻き込むビッグワンとなった。そして、前日から降っていた雨で芝にかなりの水を含んでおり、芝生に突っ込んだブレイニーなどは誰にもぶつかっていないのにかなりのダメージを負いリタイアとなった。
ベルを責める気は全くなく、これも新しい経験として学んだことだろう。
まとめ
今年も去年に続き雨に悩まされ長かったデイトナ500。なんと現地FS1とFOXの放送時間は13時間半だった。そして、レースも再開後は単調に進んだ。点数を100点満点でつけるなら55点あたりだろう。しかし、決してトップチームではないフロントローモータースポーツの優勝。まさに、アメリカンドリームを見ることができた。マイケルマクドウェルは最終ラップの数フィートだけしかリードをしていないが、勝ちは勝ちだ。そして、200周ずっとペンスキーに付いていける速さはあった。残念ながらペンスキーは全車リタイアとなったが、これもデイトナ500であり、新たな歴史が刻まれた。